アジア、楽園の日々

ラオス、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、インド、モルディブ、シンガポール、中国などに約20年滞在しました。その時に見たり聞いたりしたことをご紹介させていただきます。

マレーシア・ドライブ紀行(1994年3月25日~4月10日) 第8日目

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1994年4月1日(金) 晴れ

 本日の宿泊 カンポン・ブセラLa Chaumiere, RM15(¥600)朝食付、走行距離220km

 久しぶりに素朴な子供達の笑顔に出会った。

 ここはカンポン・ブセラの浜辺。子供達が砂浜に大きくて深い穴を掘って遊んでいる。見ていると穴の大きさと深さを競っているだけのようだ。単純極まりないそのことに打ち込んでいる姿に、何か貴重なものを見つけたような気がした。ファミコンに熱中し、塾へ通う日本の子供達の姿が重なった。使っている道具は椰子の実の殻を割って作った「おわん」の形をした容器だけ。飽きもせず、自分達の影が長く伸びるまで遊び興じていた。

 そして、このカンポン・ブセラの砂浜がまた素晴らしい。目の前180度、エメラルドグリーンの海と白い砂浜が続く。にもかかわらず、誰一人として泳いでいない。5日間滞在したティオマン島の海もよかったが、自然の海という点では、このカンポン・ブセラの浜辺のほうが上のような気がする。

 おりからの西陽を受けて、砂浜から波打ち際にかけて、椰子の木が長い影を落としている。その中に子供達の嬉しそうな声が飛び交う。遥か北方のゲラン岬の灯台に灯が入って輝き出した。

 子供達の声がなくなった浜辺に再び出てみると、波は遥か沖のほうへ引き、濡れた砂浜が広がっている。その鏡のようになった砂浜の上に陸地の後ろに漂う夕焼けの色が反射して、紅色の絨毯を敷いたように見える。

 何かが動く気配がするので下を見ると、そこいらじゅう、赤い絨毯の上をヤドカリや蟹が動き回っている。晩の食事を探しているのだろうか。それとも食後の散歩だろうか。こちらが少しでも動くと、その気配を察して、静かな絨毯に早変わりしてしまう。彼らは皆、穴の中だ。黙って立ち尽くしていると、再び彼らが動き回る。面白いので何回も繰り返した。

 聞こえるものは、引き潮の波音だけ。オリオン座をはじめとする星々が姿をあらわし始めた。

 ここへ来たのは偶然だが、どんな観光名所よりも心を満たすものを与えてくれた。子供達の笑顔とカンポン・ブセラの浜辺に感謝したい。



※  2002年9月に再度訪れたときには、カンポン・ブセラの宿La Chaumiereには人はおらず、朽ち果てていた。
  オーナーのフランス人女性は国へ帰ってしまったのかもしれない。前回、一緒に昼寝をした猫もいない。
  私のマレーシアの宝のひとつである素敵な場所が消えてしまった。

   (撮影日2002年9月29日)